どうしようもない友人たちに。

その日、ニーナとグレイ・ベックの二人は、玄関ポーチに据えられたベンチに並んで腰を下ろして、思う存分今日の陽気を享受していた。
ぽかぽか陽気の午後というものは、人間だけでなく宇宙人の心をもほころばせてしまうらしい。
その厳めしい顔に深い皺を刻んだグレイ・ベックは、しかし一見した印象とは裏腹の穏やかな口調で語りかける。

「のう、嬢ちゃんや?」

彼はいつも人間の言葉を用いてニーナと話した。
同族に対するように喉を鳴らすだけで済めばどんなにか楽だろうとは思うが、こればかりは致し方ない。
それに、考え方によればいい勉強になる。現に彼は今やほとんど完璧に異種族の言語を使いこなすようになっていた。

「わしぐらいの歳になるとな、口癖のように『近頃の若いモンは……』などと呟いてしまうのだが——」
「若さへの嫉妬ですね」
「はっは。相変わらず言いおるわ。しかしな」
「はい」
「わしには同年代の考えとることもよくわからん」
「ええ、そうでしょうね」

二人は同時に頷いて、何かを諦めたような目で庭先を見た。
まぶしいほどの陽光に照らされた常緑樹を、芝生を、そして赤いマントをはためかせるもう一人の“エルダー”がクイーンをからかっている光景を。
彼はもうずいぶん長い間、宇宙を統べる女王にご執心だった。
怒った女王が脚を踏み鳴らし、地面が揺れて、ニーナは飲み物の入ったカップを押さえた。

「いい加減にしないと本当に嫌われそう」

そうなってもいいのだろうかとニーナは訝った。直接注意を促したこともあるのだが、当人はおかしそうに「そうかもしれんな」と答えただけで、まるで態度を改める様子がないのが不思議でならない。
——まったく、小学生男子じゃないんだから。
そんなニーナの内心などどこ吹く風、長い尾の攻撃をひらりとかわした赤マントのエルダーは、愉快そうに牙を鳴らす。
グレイの方はと言えば深々と溜め息をつき、なおも続けた。

「人間に入れ込む輩がいるのはまだ理解できる」
「スカーとか?」
「おお、そうそう、あやつは筋金入りじゃな。最近見とらんが」
「この間遊びにいってきました。変わりなく夫婦でしたよ」
「うむ。まあそれはよいが……アレはな……」

これが同意を求めての発言だったとすれば、グレイは肩すかしを食らったと言わざるを得ないだろう。
なぜならニーナの反応はこうだったからだ——

「本人が幸せなら相手がなんだっていいんじゃないですか?」
「ゼノモーフじゃぞ?」
「人間がよくてゼノモーフはダメってことはないでしょう。それに私から見ればどっちも異星人で変わりありません。女王陛下は美人ですし、お似合いではないですか?」

ね、と微笑みかけられて、グレイ・ベックは今度こそ深く呻き、こう呟いたのだった。

「……近頃の若いモンは……」

2013-02-08T12:00:00+00:00

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