ぱたん、ぱた、ぱたたたた。
前後に長く伸びた頭に雨粒があたり、小気味よい音を立てて跳ね返る。
巨大なトカゲのような姿をした地球外生命体——一緒に暮らすことを決めた時にメランと名付けた——はことのほか雨が好きだった。
今日のように灰色の天気の日は必ず庭へ出て、自身の身体を打つ雨の音を楽しむのだ。
かれこれ５分以上も外でしっぽを振っている彼女は全身ずぶ濡れになっていて、見ているこちらが風邪を引きそうなくらいだった。
窓を押し上げる音につられて黒いシルエットが振り返る。するりするり、静かに身をくねらせ近づいてくる姿はまさにトカゲそのものだ。
「メラン、そろそろお家に戻ったら？」
私が指差したのは庭の隅にあるこぢんまりとした納屋。今はメランのために中身のほとんどを捨てて犬小屋さながらになっているその建物をちらりと見て、トカゲはくるると鳴いた。
まだ戻りたくないらしい。
「まあいいけど」
そういえば私も昔は雨が好きだった。こんな日にはお気に入りの長靴を履いて、黄色いビニール傘を回し、ぱたぱたと弾ける音を楽しみながらながら散歩したっけ。
「お前はまだ子供なんだね」
濡れて冷たくなった額をつつくと、メランは尾の先で水滴を跳ね上げた。
