夢をまた重ね合わせ

わかってる。ヴァニアは無口だけど実は色々考えてて、しかも結構心配性でさみしがりやだってこと。
ここでしか生きられないヴァニアと違い、町と森を行き来する私がいつかここに戻らなくなる日がくるんじゃないかと思い込み、ときどき悲観的な不安をいだいてることも。

私は明日町に戻ることになっていて、ヴァニアがやけにぎゅうぎゅうくっついてくるのはそのせいだと思う。
マジックテープみたいにくっつく体と絡みつく脚のせいで、ただでさえ狭い寝床がよけいに苦しく感じられる。
背後から伸びる腕は私のお腹にしっかり巻き付いたまま離れず、ヴァニアは私が眠ってなんかないことをちゃんと知っていた。
服の裾から忍び込む手が素肌に張りついて、嫌な予感を覚えた私はとうとう目を開けた。
乱暴ではないが遠慮のない手つきが胸を覆い、ぐにゃりと歪ませてくる。

「く、くすぐった……」

今日は夕方から気温が落ち込んだせいで、さっきまで二人して鳥肌を立ててたくらいなのに、急に威勢を取り戻した血流のせいで今は手足に汗すら滲みはじめている。
ヴァニアは胸を揉みしだきながらもう片方の手で私の髪をかきあげると、うなじに熱い息を吹きかけてきた。押し当てられた唇の感触に情けない声が漏れる。

「ヴァニアぁっ、ほんとしゃれになんないからっ……」
「ん……」
「なにが“ん”なのっ」

薄い壁を隔てただけの向こう側にはヴァニアの父親が寝てるのに。
でも私が嫌がって拒絶しようとすればするほど寂しくなるのか、行為はもはやじゃれあいの域を飛び越えそうになっている。

「……もー! 言うこと聞かない子はこうだっ」

かぶっていた薄い上掛けがばさっと音を立ててはがれ落ちる。私の影が、窓から射し込む月明かりを遮って、ヴァニアの顔が薄闇に沈む。
私にのしかかられたヴァニアが仮に驚いてたとしても、目に見える変化はかすかに見開かれたまぶただけだった。

「ふつーもっとびっくりする場面でしょ。もっと慌てなよ」
「……どうして?」
「お仕置きにならない」
「だって嬉しい、リタが……近くにいてくれると」

曖昧にはにかむ口元に浮かぶのは戸惑いなんかじゃない。むしろ最初からこうなることを期待してたみたいに思えるのは気のせい?
まるでシーツに広がる髪の乱れすら計算づくであるかのように。
認めよう、その計算に絡め取られた私は敗北者。勝者がねだるキスを祝福の代わりに与えてやれば、ヴァニアが少しほっとしたのが伝わった。

「大好きだからね。心配しないでいいんだよ」
「……うん」
「ちゃんと解っててよね」
「うん」

私はわかってる。この可愛いひとが心配性なこともさみしがりやなことも、言葉にできないめまぐるしい感情で私を愛してくれてることだって。

「ほら、そろそろ眠たくなってきたんじゃない? 腕枕する? ぎゅってしたげよっか」

ヴァニアの答えはいつも通り行動で表され、ためらわない両腕が私の背中を抱き寄せる。
近づく唇に言葉はもういらない。ただもう一度、心からの愛を捧げた。

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    ヴァニアザ・タイガー
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