もう朝を恐れないで

まっしろいシーツの上に、夜がよこたわっている。
放射線状に広がる黒くてながい髪、それはまるで凍てつく深海か、雪景色にうもれて死んでいるカラスの翼に見えた。
すくい上げるとさらさらとこぼれ落ちる。

「貞子?」

反応はない。彼女はよく眠っているようで、上下する胸にあわせて穏やかな寝息が聞こえる。
わたしはベッドに両手をついて、あどけない顔をそっとのぞきこんだ。
ながい睫毛、悲しそうな口元と少しだけ開いた薄い唇、ほんのり染まった頬。その全てに胸が締め付けられた。
……触れてしまえば、楽になるのだろうか。
わたしの掌の下で、スプリングがちいさく軋んだ。

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    リング貞子
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