クリスマス休暇の過ごし方は人それぞれ。
実家に帰省する者がほとんどだが、中には連日連夜パーティーに興じる者や、寮に残る者もいる。
貞子は帰る家がないから、ニーナは家族との不仲を理由に居残りを決めた。
共通の友人であるナンシーを見送ったあと、同室の彼女ら二人はすっかり退屈になって、ベッドの端に並んで腰を下ろしてしばらく途方に暮れていた。
ほとんどの生徒が出払った今、女子寮は普段の賑やかさが嘘のようである。
「静かになっちゃったね」
ニーナが言い、貞子も頷いた。
「本当に。ほかに誰が残ってる? メイちゃんは帰ったでしょ、サマラはエスターちゃん達と一緒に出かけたし……キャリーちゃんは?」
「キャリー? ダニエル先生とイルミネーション見に行ったよ。この寒いのに」
「えっ」
キャンディマンの愛称で知られる美術教師を思い浮かべて、貞子はきょとんとした。あの先生にはどちらかといえば怖い印象があったのに。よりによって彼と?
いぶかってニーナの顔を見つめたが、考えてみればニーナがこんな事で嘘をつく理由はない。
「意外……」
「ねー、びっくりでしょ? でも結構いいかもしんないよ。キャリーには頼りがいのある人が必要だもん」
「そうよね」
頷く貞子の表情と声には暖かさが滲んでいる。
「わたし、キャリーちゃんにはうんと幸せになってもらいたい」
「私も。……で、貞子はどう? 幸せ?」
「えっ?」
いきなり話を向けられてどぎまぎした貞子の声が裏返る。ニーナがぴったり身体をくっつけてきたせいもあるかもしれない。
腕に胸が当たっている。そう気づいて余計に鼓動が早まった。握られた手は燃えそうに熱く汗ばんで、自分のすべてがそこから溶け出してしまいそうだった。
「はい」とやっとのことで答えれば、ニーナは心底嬉しそうに笑った。
「そっかぁ、よかった」
ニーナの顔が近づいてくる。ほんのかすめる程度に唇が触れ合う。そして、秘密めいて囁かれるその言葉。
——じゃあもっと幸せになろっか。
真っ赤になった顔をうなずかせて、貞子はニーナの手を握り返した。