夢想も尽きて

猫という生き物はなぜ人間の作業を邪魔したがるんだろうね。
隣からにゅっと伸びてくる手ぴしゃりと叩いて、そんなことを思った。
正確に言えばいま私の読書を妨害をしているのは愛らしい猫なんかじゃなくて立派な成人男性だけど。ついでに殺人鬼だけど。
殺人鬼あらためマイケル・マイヤーズは先ほどから私が本のページをめくるたびに無言で太い腕を伸ばし、紙面に並んだ黒い文字を覆い隠そうと奮闘していた。
私がことのほか——これ以外のほとんどは嫌いだと言えるくらい——読書が好きだと知ったうえでの行動だとしたらさすがに怒りを禁じえない訳だが、そんな私を尻目に巨大な猫は地味な攻撃を続けている。
私がページを繰る。マイケルが手を伸ばす。払いのける。繰る。伸ばす。
このようなやりとりをお互いに意地と脊髄反射だけで繰り返すこと十分以上、いい加減めんどくさくなってきた。

「もー、マイケル嫌い」

ばたん。わざとらしく本を閉じる私と、面白いくらい硬直する白マスク。
その体に勢いよく飛び込んだ。

「嘘だよー」

固い太腿の上でごろりと仰向けになると、ほっとしたようなマイケルとばっちり視線がぶつかった。
おかしくて笑ったら頬をつつかれたけど、それが面白くてまた笑う。そのうちマイケルは私の頬を攻撃することを諦めて、かわりに手を握ってくれた。
やっぱり本よりもマイケルといるほうが好きかもしれない。ほんの少し、ね。

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