気まぐれに私を喰らう生き物

「キスしたい?」

フレデリカは小柄な体をぐっと反らせて私を見上げた。
浅緑の瞳に挑発的な光をたたえた彼女は、いかにも計算高い笑みを浮かべて私の出方を待っている。
その自信に満ち溢れた目元や、弧をえがく薄い唇を見ているうちに、昨日通り掛かったカフェの軒先でひなたぼっこをしていた猫を思い出した。
忙しなく行き来する人間たちを好奇心たっぷりに見つめていたオレンジ色の仔猫……あの子にそっくりだ。

「なによ。何笑ってるの」

ころころ変わる表情。しかめた顔すら猫じみて見える。

「いや、なんか可愛いなーと思って。よーしよしよし」
「……ふざけんな」

本心から褒めたつもりだったのだが、彼女のお気には召さなかったらしい。フレディは私の衿元を乱暴に掴むと、帽子が落ちるのも構わず、噛み付くような勢いで唇をぶつけてきた。
時折下品な水音を立てて私を貪るフレディは全然優しくないし、素直でもないけど、でもそういう所を愛してるんだよと言ったら……長い爪で引っ掻かれてしまうだろうか。

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    ♀フレディエルム街の悪夢
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