小ネタ-トマト祭/ミッフィー/亀

トマト祭

「スペインに、トマトをぶつけ合う祭事があるじゃない?」
コールが、コップの中身をマドラーでぐるぐるかき回しながら言った。

リプリーは腕を組んで壁にもたれたまま、片眉を上げる。
「それが何?」

「他の食べ物でもあるのかなって思って」

少し考えて、ステラがぽつり。
「……キャベツ祭りとか?」

間髪入れずにリプリーが言う。
「それは祭りじゃなくて殺し合いね」

コールは水の音を止めた。
なんとなく、納得してしまった。


ミッフィー

「リプリーさん、リプリーさん」

ラボの隅で工具を拭いていたリプリーのもとへ、ステラが軽やかな足取りで近づいてくる。
彼女は手を止めず、ちらと目線だけを向けた。

「なに」
「実はミッフィーの本名って、ミッフィーじゃないんですよ。知ってました?」
「そう」

声に波はない。興味も、ない。
傍らでコールがぽつりと口を挟む。

「確か……ナインチェ・プラウス、だったっけ」

ステラが両手を小さく広げて、嘆きの声を絞り出した。

「そう。私、そんなうさぎ知らないです。誰なんですか……! というか、なぜそんな冷静に正答が出てくるんですか」
「たぶん、前にどこかで見た。ミッフィーの設定資料とか」
「ミッフィーの絵本読んでるコールさん、かわいいですね」

横ではリプリーが、無言でレンチを棚に戻していた。
カチャ、と小さな音を立てて、それから一言だけ。

「……で?」
「私との会話にもっと興味持ってくださいよ」


「亀って、鳴くの?」

リプリーが何気なく言った。

ステラが即座に反応する。
「ミドリガメは鳴きますよ! 不満があるときに、キューキューって飼い主に言うんです」

「かわいい……」
コールがぽつりとつぶやいた。

ステラはさらに熱を込めて語る。
「最初はキューキュー鳴いてるんですけど、しばらく放っておくと“キュー、ハチ、ナナ”ってカウントダウン始めるんです」

静かに、真顔で続けた。
「声もガンガン低くなってく」

「やめて」
「やめて」

リプリーとコールの声が、同時に重なった。
ステラだけが、少し得意げに笑っていた。

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