プランター
静かな午後。
陽射しはやわらかく、室内の照明は半分落とされていた。空気はぬるく、時間だけが静かに流れている。
窓の外を見ながら、コールがぽつりと呟いた。
「部屋の中で小さいプランターを育てるとするじゃない?」
静かな午後。
コールが窓の外を見ながら、ふと呟いた。
リプリーはスツールに腰を下ろし、黙ってブーツの紐を解いている。
その手を止めることなく、声だけで応じた。
「それで?」
「ある程度育ったら、やっぱり外に移すべきかな?」
その声は真剣で、どこかほんの少し、迷いの色を含んでいた。
リプリーが、今度はちらりとだけ目線を寄越す。
「……何を育てたいの?」
そのとき、黙って医学書を読んでいたステラが、まるでタイミングを狙ったかのように口を開いた。
「プランターですかね」
沈黙。
コールが、小さく視線を落としたまま、完全に感情を封じた声で返す。
「違う」
「“小さいプランターを育てる”って言ったから……」
「言葉の表面だけ拾わないで」
「ちょっと悪ノリしました、ごめんなさい」
やっと片方のブーツを脱ぎ終えたリプリーが気だるげに先を促す。
「いいから。本題はなんなの」
「ミントを植えたくて。手入れが楽だって聞いたから」
コールが真面目に答えると、ステラは今度は素直にうなずいた。
「いいですね。強いし、害虫も少ないですし。日光と水分をうまく調整できれば、室内でも元気に育ちますよ」
「ほんとに?」
「ええ。でもあえて外に植えて、増えたいだけ増やしても面白いです。こう、庭じゅうミントで覆いつくされて、戻れなくなる感じ」
「そういう“取り返しのつかない楽しみ方”はいらない」
サボテン
窓辺に、ぽつんと置かれた小さな植木鉢。
その縁を、リプリーが無言で指先でなぞっていた。まるで愛しい相手の素肌をなでるように、何度も、何度も。
植木鉢の中で、サボテンはすっかり茶色くしおれ、まるで時間に置き去りにされたようだった。
その姿にどこか自分を重ねているかのように。
寂しげな気配を察して、そっとコールが近づく。アンドロイドの白い手が、リプリーの肩に遠慮がちに添えられた。
「サボテンって、もともと砂漠に生きる植物だから」
落ち着いた、やわらかな声。決して押しつけない、でも確かな距離感で。
「湿度に弱かったりするの。だから、ここの環境が悪かっただけよ。リプリーのせいじゃない」
言葉を選びながら、ゆっくりと続ける。
「今度は、私も協力するから。もう一度育ててみよう?」
その様子を、ステラがソファの背からのぞき込むようにして見ていた。
まるで、映画の途中から思い出したエピソードのように、ぽんと声を上げる。
「そういえば。私も子供の頃、サボテン育ててましたよ」
「そうなの?」と、コールが振り向く。
「でもかわいがりすぎて……トゲ、抜いてあげたら枯れちゃいました」
一瞬の静寂。
「博士ってやることなすこと極端よね」
リプリーが顔を伏せたまま、小さく笑った。
